税理士事務所の業務効率化|最初に見直すべき5つの業務
公開日:執筆:WiLBfv編集部
税理士事務所の業務効率化は、新しいツールを入れることから始めると、うまくいかないことが多いです。先にやるべきなのは、今の業務の流れを紙に書き出すことです。この記事では、最初に見直したい5つの業務と、無理なく進めるための手順をまとめました。
この記事で分かること:
- 税理士事務所で、最初に見直したい5つの業務
- ツールを選ぶ前に整理しておくこと
- 効率化を進める4つのステップと、失敗しやすいパターン
なぜ「最初の一歩」で迷うのか
迷う理由は、会計ソフトの「周りの作業」が手作業のまま残っているからです。
多くの税理士事務所では、会計ソフトや申告ソフトはすでに使われています。
入力や申告書の作成そのものは、ある程度デジタルになっています。
ところが、その前後の作業はどうでしょうか。
たとえば、次のような作業です。
- 顧問先に「領収書を送ってください」と電話やメールで連絡する
- 届いた資料を確認し、Excelの管理表に「受領済み」と書き込む
- 担当者が休んだとき、どこまで進んでいるかを本人に聞かないと分からない
- 月末に、顧問料の請求漏れがないかを目で確認する
ひとつひとつは小さな作業です。
しかし、顧問先の数だけ積み重なります。
特に繁忙期は、こうした「確認」や「連絡」に多くの時間を取られがちです。
このような作業は、会計ソフトの機能の外側にあります。
そのため「どのツールを入れれば解決するのか」が見えにくく、最初の一歩で迷いやすいのです。
だからこそ、ツール選びの前に「どの作業に時間がかかっているか」を見える形にすることが大切です。
見直すべき5つの業務
見直しの候補は、次の5つです。
すべてを一度に変える必要はありません。
自分の事務所でいちばん困っているものから選んでください。
1. 資料の回収(領収書・通帳・請求書)
資料の受け取り方を一本化し、「まだ届いていないもの」が見える状態にするのが第一歩です。
顧問先からの資料は、郵送、持参、メール添付、写真の送信など、受け取り方がばらばらになりがちです。
受け取り方が多いほど、「届いたかどうか」の確認に手間がかかります。
見直しのポイントは次のとおりです。
- 受け取る方法を、できるだけ1〜2種類にしぼる
- 顧問先ごとに「毎月必要な資料」の一覧をつくる
- 届いたもの・届いていないものを一覧で確認できるようにする
- 催促の連絡文をひな形にしておく
「誰の、何が、まだ届いていないか」がひと目で分かるだけでも、確認の時間は減らしやすくなります。
WiLBfvでは、こうした書類回収の管理を想定したツールのデモを公開しています。
顧問先ごとの未回収書類の一覧、担当者ごとの絞り込み、催促文の下書き作成を試せます。
表示しているデータはすべて架空のものです。
書類回収管理ツールのデモで、操作のイメージをつかんでみてください。
2. 顧問先とのやり取り
連絡の窓口と記録の場所を、一か所にまとめることが大切です。
電話、メール、チャット、LINEなど、顧問先との連絡手段は増える一方です。
手段が多いと、「あの件、誰がいつ返事をしたか」が追えなくなります。
担当者が代わったときの引き継ぎも大変です。
見直しのポイントは次のとおりです。
- 事務所として使う連絡手段を決める
- やり取りの記録を、顧問先ごとに後から見返せる場所に残す
- 電話で受けた内容も、簡単なメモとして同じ場所に残す
特に注意したいのが、職員の個人のスマートフォンやLINEアカウントで顧問先とやり取りしているケースです。
顧問先の情報が個人の端末に残ると、事務所として管理できません。
端末の紛失や退職のときに、情報がどこにあるのか分からなくなるおそれもあります。
税理士には、税理士法で秘密を守る義務が定められています(税理士法 第38条)。
顧問先の情報をどの手段で、どこに残すかは、効率だけでなく情報管理の面からも決めておきたいところです。
具体的なルールづくりについては、所属の税理士会や専門家にもご確認ください。
3. 申告・決算の進捗管理
期限と担当者が、事務所の誰が見てもひと目で分かる状態をめざします。
進捗管理をExcelで行っている事務所は多いと思います。
問題になりやすいのは、管理表が担当者ごとに違う形になっていることです。
列の並びや書き方がばらばらだと、所長が全体を確認するだけで時間がかかります。
見直しのポイントは次のとおりです。
- 管理表の項目(顧問先名・決算月・担当者・期限・進み具合)をそろえる
- 進み具合の書き方を「未着手・作業中・確認待ち・完了」のように統一する
- 期限が近いもの、止まっているものを目立たせる
まずは「全員が同じ形の表を使う」だけでも、全体の見通しはよくなります。
4. 請求・入金管理
顧問料とスポットの料金を、請求漏れなく確認できる流れをつくります。
毎月の顧問料は決まっていても、決算料、年末調整、相談料などのスポット料金は月によって変わります。こ
れらを記憶やメモで管理していると、請求漏れが起きやすくなります。
見直しのポイントは次のとおりです。
- 業務が終わったら、その場で「請求対象」として記録する
- 毎月の請求前に、請求対象の一覧と照らし合わせる
- 入金の確認結果も同じ一覧に残す
請求管理は、進捗管理とつながっています。
「完了した業務」がそのまま「請求対象」として見える形にできると、二重の管理が減ります。
5. 事務所内の情報共有・引き継ぎ
人に頼っている手順を、手順書やチェックリストにすることが目標です。
「この顧問先の処理は、ベテランの〇〇さんしか分からない」という状態は、多くの事務所で起こります。
その人が休んだり辞めたりすると、業務が止まってしまいます。
見直しのポイントは次のとおりです。
- よくある業務から順に、手順を箇条書きで残す
- 顧問先ごとの注意点(特殊な処理、連絡の時間帯など)をメモにまとめる
- チェックリストにして、新人でも同じ順番で進められるようにする
最初から完璧な手順書を作る必要はありません。
「次に同じ作業をする人のためのメモ」から始めると続けやすくなります。
制度対応も「ついで」に整理する
電子帳簿保存法やインボイス制度で増えた確認作業は、資料回収の仕組みと一緒に見直すと効率的です。
電子帳簿保存法では、令和6年1月から、メールやWebで受け取った請求書・領収書などの電子データ(電子取引データ)を、決められた要件に沿って保存することが求められるようになりました(国税庁:電子帳簿保存法関係)。
また、2023年10月からはインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まっています(国税庁:インボイス制度)。
こうした制度の影響で、顧問先から受け取る資料の種類や、確認する項目が増えた事務所も多いのではないでしょうか。
資料回収の流れを見直すときに、「紙で届くもの」「データで届くもの」を分けて整理しておくと、制度への対応もあわせて進めやすくなります。
制度の詳しい内容は、国税庁の最新情報をご確認ください。
効率化の進め方(4ステップ)
効率化は、次の4ステップで進めるのがおすすめです。
いきなりツールを決めず、①から順番に進めてください。
- 今の流れを書き出す:誰が、何を、何の道具で行っているかを、業務ごとに書き出します。
紙でも付せんでもかまいません。 - 時間がかかっている作業を1つ選ぶ:書き出した中から、いちばん時間がかかっている、またはミスが多い作業を1つだけ選びます。
- 既製のツールで足りるか確認する:その作業を解決できるクラウドサービスや、今使っているソフトの機能がないかを調べます。
Excelの表の形をそろえるだけで解決することもあります。 - 足りない部分だけ作る・つなぐ:既製品で足りない部分があれば、その部分だけを補う小さなツールを作ったり、今あるツール同士をつないだりします。
①の書き出しは、次のような簡単な表で十分です。
| 業務 | 誰が・何で | 困っていること |
|---|---|---|
| 資料の回収 | 担当者が電話とメールで催促 | 未提出の把握に時間がかかる |
| 進捗管理 | 各担当者が自分のExcelで管理 | 所長が全体を見られない |
| 請求 | 事務員が月末に手作業で確認 | スポット料金の漏れが心配 |
所長だけで書くのではなく、実際に作業している職員の方にも聞いてみてください。
所長が思っている以上に時間がかかっている作業が、見つかることがあります。
ポイントは、③の段階で「作らなくてよい」という結論になってもよいことです。
既製品と自社開発のどちらが合うかの判断基準は、税理士向け業務ツールの選び方でくわしく解説しています。
WiLBfvでは、①の「流れの書き出し」から一緒に進めます。作るかどうかは、その後に決めて大丈夫です。相談は無料です。無料で相談する
WiLBfvのWebアプリ・業務ツール開発には、「つくる前に、要件と画面の骨格を固める」ための企画・設計のプラン(ライトプラン)があります。
課題の整理や、必要な機能の「やること/やらないこと」の洗い出しを行い、作る場合のおおよその範囲をまとめます。
いきなり開発を発注しなくてよい進め方です。
また、作る場合も「まず必要な機能だけ作り、反応を見て育てる」進め方(MVP:最小限の機能で試す版)をおすすめしています。
費用の考え方は業務システム開発の費用相場をご覧ください。
失敗しやすいパターン
業務効率化でよくある失敗は、次の3つです。
始める前に知っておくだけでも、つまずきを避けやすくなります。
全部を一度に変えようとする
資料回収も、進捗管理も、請求も、全部を一度に新しくしようとすると、職員の負担が一気に増えます。
結局、元のやり方に戻ってしまうこともあります。
1つの業務で効果を確かめてから、次の業務に広げるほうが定着しやすいです。
スタッフや顧問先が使いこなせない
どんなに便利な仕組みでも、使われなければ意味がありません。
特に顧問先にも操作してもらう場合は、注意が必要です。
顧問先の負担が増えると、結局メールや郵送に戻ってしまいます。
顧問先側の操作は、できるだけ簡単にすることが大切です。
導入前に、実際に使う人に試してもらうと安心です。
セキュリティを後回しにする
税理士事務所は、顧問先の大切な情報を扱います。
効率を優先して、安全面の確認を後回しにするのは避けたいところです。
ツールを選ぶときや作るときは、次の点を最初に確認しておきましょう。
- データがどこに保存されるか
- 誰がどの情報を見られるか(アクセス権限)
- バックアップの方法
- マイナンバーなど、特に慎重な扱いが必要な情報を扱うかどうか
WiLBfvがツールを設計する場合は、扱う情報の範囲(何を保存し、何を保存しないか)を最初に一緒に決めます。マイナンバーなど特に慎重な扱いが必要な情報は、原則としてツールで扱わない設計をご提案しています。
なお、生成AIなどのAIツールを業務に取り入れる場合の注意点は、税理士事務所のAIツール活用例で整理しています。
まとめ:5つの業務のチェックリスト
税理士事務所の業務効率化は、ツールを入れる前に、業務の流れを書き出すことから始まります。
最後に、この記事で紹介した5つの業務をチェックリストにまとめます。
- □ 資料の回収:受け取り方がばらばらになっていないか。未提出の資料がひと目で分かるか
- □ 顧問先とのやり取り:連絡の窓口と記録が一か所にまとまっているか。個人の端末に情報が残っていないか
- □ 進捗管理:期限と担当者が、誰が見ても分かる形になっているか
- □ 請求・入金管理:スポット料金の請求漏れを確認する流れがあるか
- □ 情報共有・引き継ぎ:特定の人しか分からない業務が残っていないか
チェックがつかなかった項目のうち、いちばん困っているものを1つ選んでください。
そこが、最初に見直す業務です。
WiLBfvでは、既製のツールで足りるかの確認から、足りない部分だけの開発までご相談いただけます。
事務所の今のやり方を伺ってから、必要なものだけをご提案します。
くわしくは業務ツール開発や税理士事務所向けのWeb・業務ツールのページもご覧ください。
ホームページと業務ツールを同じ窓口でご相談いただけるので、顧問先募集のためのホームページについても、あわせてお話しいただけます。
「この作業、もっと楽にならないかな」という段階でも大丈夫です。
相談・お見積もりは無料です。無料で相談する
よくある質問
Q.何から始めればいいですか?
まず今の業務の流れを書き出し、いちばん時間がかかっている作業を1つ選ぶことから始めるのがおすすめです。
Q.小さな事務所でもシステムは必要ですか?
必ずしも新しいシステムは必要ありません。既製のツールやExcelの整理で解決できる場合もあります。
Q.顧問先にも新しいツールを使ってもらう必要がありますか?
顧問先の負担が増えると定着しにくいため、顧問先側の操作はできるだけ簡単にする設計が大切です。